ギリシャ様式は古代ギリシア人によって創造された建築様式で、ヨーロッパ建築の起源ともいえる建築様式です。
ヨーロッパの建築は、紀元前8世紀頃は木造でしたが、紀元前7世紀頃からギリシャ様式の石での創造が開始されはじめ、紀元前5世紀から紀元前4世紀頃にその頂点を迎えます。
ギリシャ建築の柱の様式
まず、代表的なギリシャ柱の建築様式として- ドーリア式
- イオニア式
- コリント式
ペロポネソス半島とイタリア半島南部ではドーリア式が発展し、小アジア(現在のトルコ)ではイオニア式建築が発達します。
ギリシャ様式は、柱周りなどの細部の装飾や黄金比を用いたデザインが特徴です。
エンタブラチュア(柱の上に載る水平材)は古代建築の重要な要素であり、一般的には
- アーキトレーブ
- フリーズ
- コーニス
ドーリア式(ドリス式)

アバクスとエキヌス
ドーリア柱は、シンプルで力強いデザインの柱です。ドリス式とも言われます。
柱頭(柱の上部)に装飾がなく、柱の下部に台座はありません。
柱頭は平たいプレート型になっており、
- アバクス(下図の1)
- エキヌス(下図の2)

ドーリア式は、パルテノン神殿などが有名です。

ヘパイストス神殿もドーリア式です。

イオニア式
ヴォリュート(渦巻き)
イオニア柱は、優雅で細長く、柱頭に渦巻き(ヴォリュート)が付いているのが特徴で、柱の下に台座があります。イオニア式は、エレクティオン神殿などが有名です。


アッタロスの柱廊の列柱は、外側はドーリア式、内側はイオニア式の建築様式を用いています。

コリント式

アカンサスの葉の彫刻
コリント柱は、最も装飾的で、柱頭にアカンサスの葉の彫刻が施されています。コリント柱は、ゼウス神殿などが有名です。

ギリシャ建築の柱のパーツの名称
それではギリシャ柱の各部分の名称です。下記のギリシャ柱は、上記の
- ドーリア式
- イオニア式
- コリント式

1. エンタブラチュア
2. コラム
3. コーニス
4. フリーズ
5. アーキトレーブ
6. 柱頭(キャピタル)
7. 柱身(シャフト)
8. 礎盤(バーシス)
9. ステュロバテス
10. ステレオバテス(基壇)
エンタブラチュア(天井部分)
図のように、エンタブラチュアは- コーニス
- フリーズ
- アーキトレーブ

コーニス
コーニスは、建物または壁を完成させる水平な形作られた屋根の突起部、または上方の傾斜した部分です。コーニス
シマ
シマ「Sima」は、屋根になる部分で、水を落とす役目があります。シーマ「Cyma」(波)状になっていることもあり名称がややこしいが、シマ(Sima)とCymaは異なり、シーマ「Cyma」(波)状はオジー型(S字)とも言われます。
表面にパルメットやエッグ・アンド・ダーツの装飾が施されていたりします。
ゲイソン
シマの下にあるコーニスの中心部分。Geison
ラルミエ
ゲイソンの下部の突出部をラルミエといいます。Wikipediaフランス総合百科
ムテュール
ムテュールは、コーニスの下部にある、連続した突起物です。フリーズ
フリーズは、エンタブラチュアの中央の、幅広い部分です。トリグリフ
トリグラフは、飾り板状の部分です。メトーブ
メトーブは、トリグリフとトリグリフの間の部分で、装飾される場合と装飾のない場合もあります。アーキトレーブ
アーキトレーブは、柱の直上に水平に架け渡される梁状の部材で、エンタブラチュアの最下部を構成します。Architrave
ファスキア
アーキトレーブの一番広い面の部分。Fascia
タエニア
アーキトレーブ上部付近にある、グッタエとグッタエの間に存在する小さな凸型の部分。Taenia
グッタエ
ドーリア様式のアーキトレーブ上部付近で使用される、水をはじく小さな錐形の突起部分。Gutta
滴状という意味。
ソフィット
アーキトレーブなどの裏面に時折り絵が描かれていたりしますが、それをソフィットというみたいです。ラテン語はsuffixusが該当するようですが、そのようには言わない後世に出来た言葉のようです。
Soffitte
キオナス(柱頭・柱身・柱礎)
- 柱頭(キャピタル)
- 柱身(シャフト)
- 柱礎(バーシス)
柱頭(キャピタル)
キャピタルは、前述のように、ギリシャ柱の特徴が一番現れます。アバクス(ドーリア式)
四角い部分。エキヌス(ドーリア式)
円状の部分。ヴォリュート(イオニア式)
渦巻きの部分。アカンサス(コリント式)
アカンサスの葉の彫刻柱身(シャフト)
柱身は柱の中心部分で、通常縦に溝(フルーティング )が刻まれています。柱身は積んで作るのですが、それぞれの柱身の中心には小さな穴があり、そこに木製のダボを入れて接合していました。
アストリガル
アストリガルは、シャフトの最上部で、キャピタルとの接合部です。フルーティング
フルーティングは、シャフトの溝(フルート)のことです。それぞれ以下のようになっています。
| 柱の様式名 | 形状 | フルーティング数 |
|---|---|---|
| ドーリア式 | アリス | 約20本 |
| イオニア式 | フィレット | 約24本 |
| コリント式 | フィレット | 約24本 |
フルーティングには、以下の種類があります。
アリス
尖った逆向きV字型の溝間フルーティング。アリスは「稜線」という意味で山のように尖っている形状をいいます。
フィレット
四角っぽい逆向きU字型の溝間フルーティング。柱礎(バーシス)
また柱礎は、礎盤・柱基ともいわれ、ドーリア式は存在しない場合があります。トーラス
柱礎などにある丸い部分はトーラスといったりします。また、細いトーラスでフィレットが付いているものをアストラガルといいます。
プリンス
角ばっている部分をプリンス(台座)といいます。クレピドーマ(土台部分)
土台全体のことを「クレピドーマ」といいます。ステュロバテス
ステュロバテス(スタイロベート)は段差がある土台の一番上の段の部分です。ステレオバテス
ステレオバテス(ステレオベート )は基壇ともいい、はそれ以下の部分です。エウテュンテリア
土台の奥行きを「エウテュンテリア」といいます。ギリシャ建築の屋根の構造
ペディメント
ペディメントは、屋根の三角の部分です。このペディメントにも種類があり
- 三角ペディメント(Triangular Pediment)
- 半円ペディメント(Segmental Pediment)
- 破断ペディメント(Broken Pediment)
- 反転ペディメント(Inverted Pediment)
- スワンネックペディメント(Swan-neck Pediment)
ギリシャ様式で扱われるペディメントは三角ペディメントですが、これを元に後の様式に発展していったため、他のペディメントも合わせて載せておきます。
三角ペディメント

三角ペディメントは、ギリシャ建築の標準的なペディメントです。
トライアングラーペディメント(Triangler Pediment)などとも言われます。
写真はパルテノン神殿を模したアメリカのナッシュビルの神殿です。
ペディメントの頂上部やテュンパノン(三角の面の部分)に、後述のアクロテリオンで装飾されます。
(円形ペディメント)

円形ペディメントとは、ペディメントの部分が三角ではなくアーチ状になっているタイプです。
セグメンタルペディメント(Segmental Pediment)や、ラウンドペディメント(Round Pediment)とも言われます。
円形ペディメントは、ローマ建築やルネサンス建築で発展しました。
写真は、奈良国立博物館で、フレンチ・ルネサンス様式の建物となっています。
(破断ペディメント)
破断ペディメントは、三角形や半円形のペディメントが途中で途切れているペディメントです。ブロークンペディメント(Broken Pediment)とも言われます。
バロック建築や新古典主義建築でよく使われています。
(反転ペディメント)

反転ペディメントは珍しいデザインで、内側が狭くなるような形になっています。
バロック様式以降でまれに見られたりします。
写真はツヴィンガー宮殿です。
(スワンネックペディメント)
スワンネックペディメントは、S字型に湾曲したペディメントです。バロック建築やロココ建築で特に好まれ、装飾的で動的な印象を与えます。
ギリシャ神殿の基本構造
古典的な小規模構造

- ディスティロス(Distylos)
- アンタエ(Antae)
- プロスティロス(Prostylos)
- アンフィプロスティロス(Amphi-Prostylos)
- ペリプテラル(Peripteral)
ディスティロス

- ディスティロス「Distylos」(ギリシャ語)
- ディスタイル「Distyle」(英語)
アンタエ

- アンタエ「Antae」(ギリシャ語)
- アンティス「Antis」(英語)
このスタイルは、上記写真の「デルファイのアテネの宝物庫」などが有名です。
プロスティロス

- プロスティロス「Prostylos」(ギリシャ語)
- プロスタイル「Prostyle」(英語)
「前に柱がある」という意味で、上記写真の「ブジザのローマ神殿」が有名です。
アンフィプロスティロス

- アンフィプロスティロス「Amphi-Prostylos」(ギリシャ語)
- アンフィプロスタイル「Amphiprostyle」(英語)
上記写真の「アテナ・ニケ神殿」が有名です。
ペリプテロス

- ペリプテロス「Peripteros」(ギリシャ語)
- ペリプテラル「Peripteral」(英語)
上記写真の、フランスのニームにある「メゾン・カレ」などが有名です。
ペリプテロス構造

ペリプテロスは、ギリシャの神殿の中で最も有名で、最も普及している形とされています。
その他に発展系などの形として
- ディプテロス
- プセウドディプテロス
セラ

セラ(Cela)は真ん中の部屋の部分です。
ナオスとも言います。
神々の像が置かれているセラは、神の部屋と考えられており、一般的に訪問者には開放されていませんでした。
プロナオス

プロナオス(Pronaos)は、ナオスの前という意味。
アディトン

アディトン(Adyton)は、セラの一番端にある小さなエリアで、最も内側の聖域。
オピストドモス

オピストドモス(Opisthodomos)は、神殿の後部にある、宝物などを保管する部屋。
プテロン

プテロン(Pteron)は、真ん中の壁と周りの柱の間で、訪問者のための屋根付きの空間。
ギリシャ建築のその他の技法
カリアティード

柱の代わりの役目を担う女性像のこと。
エレクテイオン神殿が有名。
プロピュロン
プロピュロン(propylon)またはプロピュライア(propylaea) は、ギリシャ建築の門のことです。写真はアフロディシアス(アフロディテの神殿)の門。
コロネード

コロネードは、古代の建築において一つのエンタブラチュア(柱の屋根部分)で連結された柱の並びをいいます。
いわば列柱のことです。
ペリスタイル

ペリスタイルは、ギリシア建築やローマ建築における、柱のあるポーチ、または中庭を取り囲むコロネードで中央に庭園などがあるものを指します。
のちにクロイスターと発展していった。
エンタシス

エンタシス(entasis)は、ギリシャ建築において円柱下部もしくは中間部から、上部にかけて徐々に細くした形状の柱のことをいいます。
パルテノン神殿などの円柱がそのように設計されています。
ポルチコ

ギリシャ建築は後に、建物の玄関に導くための歩道上の屋根がある柱列であるポルチコの起源となりました。

ポルチコ(Portico)とは、イタリア語で「柱廊」を意味する言葉になります。
アクロテリオン

アクロテリオンは、屋根の頂や隅を飾る彫像などをいいます。
神・人間・怪物などの単身像、または模様などがあります。
ギリシャ様式の有名な建造物一覧
ゼウス神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 起源前6世紀 - 2世紀 |
| 着工当時の国名 | アテナイ |
| 現在の国名 | ギリシャ |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
コリント式の神殿です。
パルテノン神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 起源前447年 - 紀元前438年 |
| 着工当時の国名 | アテナイ |
| 現在の国名 | ギリシャ |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
ドーリア式の代表例。
アテネのアクロポリスに建てられた、女神アテナを祀る神殿です。
エレクテイオン神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 起源前421年 - 紀元前407年 |
| 着工当時の国名 | アテナイ |
| 現在の国名 | ギリシャ |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
パルテノン神殿のすぐ近くにあるイオニア式の神殿です。
コンコルディア神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 紀元前4世紀頃 - 紀元前4世紀頃 |
| 着工当時の国名 | 古代ギリシャ |
| 現在の国名 | イタリア |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
古代ギリシャの植民土地であったシチリア島南部アグリジェントに残る遺跡群『神殿の谷』の代表的建造物。ドーリア式。
アポロ神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 紀元前4世紀頃 - 紀元前4世紀頃 |
| 着工当時の国名 | 古代ギリシャ |
| 現在の国名 | トルコ |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
ディディマのアポロ神殿。
ニケ神殿

| 現様式着工年 - 完成年 | 紀元前449年 - 紀元前420 |
| 着工当時の国名 | アテナイ |
| 現在の国名 | イタリア |
| 建築分類 | 神殿 |
| 建築様式 | ギリシャ様式 |
アテネのアクロポリスに造られたイオニア式の小さな神殿。
